「1億人を超える国民が、あなたの偉業を誇りに思う」

フィリピンはテニスの強豪国ではありませんでしたが、この選手の登場により今後10年で変わるかもしれません ― それが、アレックス・イーラです。

ケソン市出身の17歳は、USオープン・ジュニア部門の女子シングルスでチェコのルーシー・ハブリコバをストレートで破り、1セットも落とすことなく優勝。グランドスラム・ジュニアのタイトルを獲得した初の東南アジア出身選手となりました。 また、男子シングルスではカルロス・アルカラスが優勝、男子ダブルスではラジーブ・ラムがタイトルを防衛し、バボラ ピュアエアロ ラケットを使用する選手がUSオープンで3冠を達成しました。

多くのプロテニスプレーヤーと同じように、アレックスも家族がプレーしているのを見てラケットを手にしました。その時、彼女はまだ4歳になっていなかったと言います。 彼女の場合は、現在アメリカの大学でテニスをしている兄のマイケルの影響でしたが、兄妹がテニスを始める大きなきっかけとなったのは、祖父が地元のテニスクラブでコーチをしていたことでした。

やがて、アレックスは祖父をしのぐほどの才能を発揮し、子どもの頃と10代になってから2つのITFツアーチームにスカウトされるようほどになったのです。 彼女は次のように述べています。「私は国を出なければなりませんでした。 故郷は大好きでしたが、フィリピンのテニス界はそれほど発展しているわけではありません。ですから、もっと強くなるためには、レベルの高い選手たちと対戦できる試合やトーナメントのチャンスが必要だったのです」。

ラファエル・ナダル・アカデミー

彼女の大ブレイクのきっかけは、14歳以下の世界大会として知られるフランスの「Les Petits As」（小さなエースたち）にワイルドカードで出場したことでした。 予想に反して、レフティのアレックスはこの大会で優勝し、すぐにマヨルカのラファエル・ナダル・アカデミーをはじめとするスカウトの目に留まるようになったのです。

この4年間アカデミーを拠点としてきた彼女は、若いプロ選手が飛躍するための場としてアカデミーを高く評価しています。 「本当に素晴らしい環境です。みんな一生懸命に練習していて、本当に自分を追い込まなければなりませんが、その分報われます。 そして、ラファ自身も良く来てくれます ― 彼は女子よりは男子と打つことの方が多いのですが、いつもすべての選手たちに挨拶してくれますし、私にもとても親切にしてくださいました」。

2020年の全豪オープンと2021年の全仏オープンでジュニア女子ダブルスのタイトルを獲得した輝かしいジュニア時代を経て、アレックスは2021年末にジュニアからシニアに転向。2022年の大半は女子ツアーの下位ランクの大会に出場し、WTAランキングでトップ300入りを果たしました。 しかし、2022年のUSオープンではジュニアに戻り、ニューヨークでは全仏での準決勝を超え、自らの新たな歴史を作りました。

「最高バージョンの自分」

フィリピン出身プレイヤーの名前をほとんど見ることのないテニス界で、彼女は今、自分の国をテニスの世界地図に載せるチャンスを手にしています。 近年、ツアーでフルに活躍したのはセシル・マミートとトリート・ヒューイだけですが、2人ともアメリカ生まれのハーフで、キャリアではダブルスを主としていました。
 

「大きなプラットフォームを持ちたいのです。 USオープンでの優勝は、自分のためだけでなく、フィリピンのテニス界を助けることになると思っています」とアレックスは語ります。同じくフィリピンの世界的スポーツスター、ボクシング元世界チャンピオンのマニー・パッキャオは、彼女の勝利を称えてツイートしました。「1億人を超える国民が、あなたの偉業を誇りに思っています。 私の家族と私はあなたに敬意を表します！ 刺激的な存在であり続けてください。 トレーニングに励み、謙虚でいてください。 あなたのさらなる力、そして私たちフィリピン人の力を、もっと世界に見せてやりましょう。 おめでとうございます！」

では、アレックス・イーラの才能とは？ 「正しく進んでいければ、世界一もグランドスラムも達成可能な目標になると思います」と彼女は語りました。 「でも、私の一番の目標は、最高バージョンの自分になることなんです」。