つねに最高レベルのパフォーマンスを追求するチャンピオンたち。彼らに必要なのは、彼らが求める仕様にあくまでも忠実なラケットです。それはコンマ・ミリ単位、コンマ・グラム単位の誤差も許されないオーダーであり、バボラは長年に渡り、こうした精緻な挑戦を繰り返しながら、チャンピオンたちの具体的なニーズに応えた「カスタマイズド・ラケット」を提供してきました。
「F1チームでは、テスト走行の分析をもとに、エンジニアたちが性能の向上に取り組みます。私たちのやっていることも同じです。いかに選手たちの期待に応え、シーズンを支える高い性能を実現し、その人にぴったりなラケットを提供できるかなんです」。そう語るのは、バボラのパフォーマンス研究所を統括するシルヴァン・トリキニョー。彼のチームがバボラの選手のために調整するラケットは、選手1人につき年間40本から60本になり、すべてを合計すれば年間3,000本以上にもなります。
「私たちの仕事には、大きく分けて2つの役割があります。1つは年間を通じて、選手が提示する仕様に基づいたラケットを提供すること。もう1つは、彼らへのラケットに関するアドバイスです。つまり、ストリングやバランス、操作性、スイングウェイトなどの特性を調整して、いかに彼らのゲームの質を高めてもらうかですね」。

では、カスタマイズに関する最初の仕事から説明しましょう。トリキニョーのチームでは、2人の専門スタッフが中心となってラケットの準備やカスタマイズにあたります。「とくに専門性が要求されるのは、ラケットの性能を左右するさまざまな特性をいかに最適化していくか。つまり、重さやバランス、スイングウェイトなどをプレーヤーの能力に合わせて、いかに調和させていくかなのです」と、トリキニョーは語ります。
また製造上の許容誤差により、それぞれのラケットにはどうしても、わずかな違いが出てきます。こういった小さな誤差を補正するのも専門スタッフの役割です。そうすることで、パワーや正確さ、操作性を考慮した、そのプレーヤー専用の仕様を作り込んでいくのです。
コンマ・グラム単位の挑戦


チャンピオンたちへのサポート
2年ほど前から、私たちがお手伝いをしているのは、カナダの若手選手フェリックス・オーガーアリアシムです。体の成長や技術面、戦術面での進歩に合わせて、彼のテニスやスイングの進化をサポートしながら、パフォーマンスの向上に向けた最適なカスタマイズを提案しています。そのためにはコートでのプレーヤーとコーチを交えた対話が重要です。そうすることで、プレーヤーのテニスをリアルタイムで観察しながら、直接ラケットを調整することができるのです。「グランプリの開始前に、メカニックがクルマをチューニングするのと同じです。プレーヤーが使い心地や効果に満足する様子を見るのはわくわくしますね」と、トリキニョーは言います。
使い心地からパフォーマンスの向上まで、ラケットのカスタマイズとは、プレーヤーに寄り添いながら、これまでにない速さで、確実にラケットを供給し、ツアー中の破損や消耗などにも対応していくこと。「世界の隅々にまで、準備の整ったラケットを可能な限り迅速に届けること、これも私たちの重要な使命です」と、トリキニョーは言います。
バボラのパフォーマンス研究室によるカスタマイズ・サービスは、シーズンを通じて、選手のサポートに専念。また一方ではローラン・ギャロス大会のパートナーとして、カスタマイズ・サービスを提供し、会場のあるポルト・ドートゥイユに集うすべてのチャンピオンたちを支えています。オフィシャルストリンガーとしての立場を超えて、パフォーマンスの向上をめざした独自のサービスで、チャンピオンたちにバボラならではの技術的な付加価値を提供する。それが私たちパフォーマンス研究室の使命なのです